― 企画の主旨・目的
港湾等の業界において、我が国の生産年齢人口の減少と若年層の理系離れによる技術者確保、働き方改革やワーク・ライフ・バランス向上の取り組みは喫緊の課題となっています。その上で、将来を担う若手や女性技術者の存在はより重要性を増しており、彼ら・彼女らの活躍を紹介することは、技術者の確保、職場環境を改善する上で、業界にとっても参考になるものと思います。
このため、特に人数が少ない女性技術者を対象に、職場における活躍やワーク・ライフ・バランス等について焦点を当て、インタビュー形式で技術者を紹介します。
なお、インタビュアー(聞き手)は、当センター広報委員にご就任いただいている女性委員にお願いすることとしました。
― 出席者
■新谷(あらや)ひかる 様
所属:(株)アルファ水工コンサルタンツ技術部
プロフィール:北海道大学水産学部を卒業し、2019年4月に(株)アルファ水工コンサルタンツに入社。技術部に配属され、主に漁港計画の業務に従事されています。
■山本也実 様
所属:北海道開発局釧路開発建設部釧路港湾事務所第1工務課第2工務係員
プロフィール:函館工業高校を卒業し、2016年4月に北海道開発局に入局。函館港湾事務所、苫小牧港湾事務所の勤務を経たのち、2020年から釧路港湾事務所に勤務し、現在は、第1工務課にて工事・業務の積算・監督を担当されています。
― インタビュアー(CPC広報委員会委員。五十音順)
神山 千佳さん:五洋建設㈱札幌支店
中島 康子さん:日本データーサービス㈱
~ 就職先を選んだ志望理由は
新谷 高校の時に漠然と海は広くていいなと思い、大学進学時に海と人をつなぐ仕事がしたいと考え北海道大学水産学部を志望しました。
海や水産というキーワードで就職先を探している中、アルファ水工コンサルタンツを見つけ、食品業界以外にも、魚や海に関われる仕事があることを知り、土木業界に興味を持ちました。
山本 小学生の高学年の時から測量に興味を持っていました。中学生の時に函館工業高校の土木課で測量ができることを知り興味があったので、そこを目指して勉強をしました。その結果、念願の函館工業の土木課に入ることができたので、その知識を生かして土木の仕事をしたいと考えていました。就職は、民間も考えたのですが、就職担当の先生から「山本さんは公務員の方が向いているよ」と言われ、市役所や北海道開発局とかを受験しました。北海道開発局の説明会で港湾は世界につながっている説明を聞いてカッコいいなと思い、また大きな事業を手掛けていることを聞いて北海道開発局の港湾を志望して就職しました。
~ 就職してからのお仕事は
新谷 大学は水産学部だったため、就職して初めて建設土木の内容に触れました。今でも図面を理解するのに苦戦しています。それでも、漁業のことを調べたり、実際に漁港に行ったり、水環境の建設・土木コンサルタントである会社の仕事を今では面白いと感じています。
アルファ水工の技術部は、調査、計画、解析、設計、建築、維持管理という部署に大きく分かれており、私は、漁港計画の部署に1年目から配属されています。
山本 最初は、地元の函館港湾事務所に2年間、次に苫小牧港湾事務所も2年間勤務しました。現在は釧路港湾事務所に勤務しています。
釧路では、深浅測量や水質調査・底質調査の業務や、設計の仕事を3年間担当して、現在は工事や業務の積算などを担当しています。
~印象に残っている仕事は
新谷 入社してから5年間、北海道開発局の業務で、苫前漁港の新規計画検討を担当していました。計画立ち上げを検討し始めた最初の年から、最後の事業評価の年まで、様々な形で携わることができました。大規模な事業となりましたが、無事に今年度から計画着手となり、達成感とやりがいを感じるとともに、とても貴重な経験になりました。
実際に漁業の現場を見に行き、漁業者さんに話を聞いたこともあり、その内容が形となって新規計画を立てられたことがとても印象に残っています。また担当者にたくさん助けていただいたこともあり、事業評価で認められた際には、皆様の安心した表情を見られてとても嬉しく感じました。
苫前漁港の整備事業はこれからですが、計画に携わった施設のうち既に完成したものもあります。利用者の方から、施設ができて魚価が上がったとの声を直に聞いただけではなく、新聞に掲載されたことにも喜びを感じました。
山本 私は釧路に来るまでの函館・苫小牧ではずっと工事の監督をやっていました。港の仕事をする上では、工事の施工を理解しないと調査するにも設計するにもイメージができないのかなと思っています。工事を担当した施設が完成して利用される場面を迎えると、安心感と達成感により、仕事のやりがいを感じます。
また、調査・設計を担当した際には、設計の工夫したところや施工方法の特徴など全体を理解することができ、すごい達成感がありました。全体を理解できたおかげで、視察対応や小学生の見学会などで施設を案内するときには、ポイントを掴んでうまく説明できるようになりました。
~これからやってみたい仕事や目標
山本 以前釧路港湾事務所の計画・保全課にいましたが、その時に上司が事業評価や計画の仕事をしていることを見て、今後私も計画系の仕事に携わりたいと思っています。
また、今までに函館・苫小牧・釧路を経験したので、まだ行っていない道内の地域で仕事をしてみたいと思っています。
新谷 上司は、広い分野での知識や経験があり、多面的な視点を持って判断をされています。広い視点から、想像力を持って計画の仕事ができるようになることが目標です。
私は入社以来、計画部署に配属されていますが、計画を立てるにあたり、調査や解析の結果、また物ができるイメージや設計面のことも理解することが必要です。そのためには、他の部署の人にも積極的に相談に行き教えてもらっています。
多面的な視点が必要とされることは、計画分野の大変で苦労しているところでもありますが、同時に面白いところでもあると感じています。
山本 私も分からないことがあると、調査設計に関してはコンサルの方や、工事に関しては建設会社の方に教えてもらい、そこで学んで成長させていただいていると思っています。現場にいるコンサルや建設会社の方々はとても優しく丁寧に教えていただけるので、とても感謝しています。
座談会の様子
~港への期待など
新谷 やっぱり漁師さん達が働きやすくなるような港の整備に期待しています。
漁港の話になりますが、北海道は特に厳しい冬もあり、漁業は過酷な作業環境と感じています。北海道開発局さんで整備している防風柵、屋根付き岸壁や船揚場などのように、働きやすい環境づくりが求められています。昨年、福島町のコンブ漁師さんにお話を聞きましたら、船揚場に屋根施設が整備されたことで、コンブの洗浄や乾燥作業などがしやすくなったと喜んでいたことを思い出します。
~職場のよいところ
新谷 計画分野以外のことで悩んだときに、同じ会社の各部署に詳しい先輩方がいて、いつでも聞けるところが良いところだと思います。
会社の飲み会やイベントで他の部署の方々ともお話する機会があることで繋がりができ、困った時に相談しやすい環境になっていると感じます。また、同じ世代の社員も多いので、休日にはフットサルやバトミントンなどを行っており、居心地が良い職場です。
山本 私の職場は先輩方が優しく気軽に相談できる環境です。怒られた記憶がないくらいで、なんでも教えてくれる方が多いです。
~職場の改善を望むところ
山本 近年は釧路でも気温や湿度も高くなる日が頻繁にありますので、執務室にクーラーが付くと作業効率も上がると思います。
~これからの土木業界に望むこと
山本 土木系の仕事はイメージ的に環境が悪いと思われがちですが、職場環境は改善されています。現場だけの仕事ではなく、執務室での仕事など色々とあるので働きやすい職場だと思います。その辺をもっとPRして、土木や北海道開発局の仕事に、興味を持ってもらう説明会などを開催すると良いと思います。
新谷 色々なことを経験することで、内業メインでも仕事ができることも必要ですし、会社も色々なワークスタイルを推進すれば働きやすい職場になると思います。
~ 長時間にわたり、いろいろなお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。とても有意義な座談会になりましたことに感謝申し上げます。
前列左から山本さん、新谷さん
後列左から中島さん、神山さん、
― インタビュアーからひとこと
神山委員:
今回も若き女性技術者二人からパワーを頂きました。
お二人が、この業界に入った動機や現在携わっている業務を伺い、生き生きとして、将来の展望などたくましさを感じました。
もっともっとたくさんの方に知ってもらい女性技術者が増える事を望みます。
第3回リレートークもご期待下さい。
ありがとうございました。
中島委員:
第1回座談会同様、若い技術者さんの仕事への取り組み姿勢を伺うことができ、私自身にとっても大変有意義な座談会でした。昔若手であった方々も、ご自身の若いころを振り返っていただける記事になったと思います。
この業界の魅力を知っていただくために、多くの方に読んでいただければ幸いです。
本日はどうもありがとうございました。
― 編集後記
2時間ほどの座談会でしたが、出席者とインタビュアーとの会話が途切れないほど、多様な話題でトークしてくださいました。紙幅の関係で全文を掲載できませんが、若手の仕事への向き合い方、企業や官庁の職員に対する取組みも参考になりました。
座談会に出席いただいた新谷さん、山本さん、そして2名の広報委員にお礼申し上げます。
次回の「北のみなとリレートーク」もご期待ください。