一般社団法人寒地港湾空港技術研究センター COLD REGIONS AIR AND SEA PORTS ENGINEERING RESEARCH CENTER

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シリーズ企画『北のみなとリレートーク』第3回

― 企画の主旨・目的


女性技術者の活躍に光をあてて — 港湾業界の未来を担う存在

 現在、港湾等の業界では、我が国の生産年齢人口の減少や若年層の理系離れにより、技術者の確保が喫緊の課題となっています。さらに、働き方改革やワーク・ライフ・バランスの向上に向けた取り組みも求められており、職場環境の改善は業界全体にとって重要なテーマです。
 このような状況下で、将来を担う若手技術者、そして女性技術者の存在はますます重要性を増しています。彼ら・彼女らの活躍を紹介することは、技術者の確保のみならず、職場の魅力を高める参考にもなると考えています。
 そこで本誌では、特に人数が限られる女性技術者に焦点を当て、職場での活躍ぶりやワーク・ライフ・バランスの取り組みについて、インタビュー形式で紹介いたします。
 なお、インタビュアー(聞き手)は、当センター広報委員を務める女性委員が担当し、同じ女性技術者の視点から温かく、等身大の声を届けます。


― 出席者


■奥野 恵 様
所属:日本データーサービス 株式会社 水工第I部
プロフィール:2004年3月 弘前大学農学生命科学部を卒業し、2007年4月 日本データーサービス(株)入社し営業部に配属。2009年5月~2012年4月 寒地港湾技術研究センター(当時)に出向し、2012年5月 水工第Ⅰ部に配属となり、主に積算業務に従事されています。


■坪井 百花 様
所属:北海道開発局農業水産部水産課建設係
プロフィール:2018年3月函館工業高等学校を卒業し、4月北海道開発局に入局。函館港湾事務所、苫小牧港湾事務所、本局開発調整課の勤務を経たのち、2025年から本局農業水産部水産課に勤務し、現在は、全道の漁港の事業実施を担当されています。


― インタビュアー(CPC広報委員会委員。五十音順)
大畠 嘉織さん:(株)アルファ水工コンサルタンツ
神山 千佳さん:五洋建設㈱札幌支店


~自己紹介
奥野 2009年から2012年までの間、寒地センターに出向しておりました。初年度には大畠さんとお会いし、大変お世話になりましたので、本日こうして再びお目にかかることができ、大変嬉しく思っております。再会を心より楽しみにしておりました。
 その後、日本データーサービス(株)に復帰し、水工第I部に配属され、以来ほぼ一貫して積算業務に従事しております。


坪井 入局後、函館で2年間、苫小牧で3年間勤務し、札幌の開発調整課に2年間在籍しました。
 開発調整課は港湾や土木とは異なる分野の部署でしたが、今年4月より港湾部門に戻り、水産課に配属されております。現在、入局8年目となりますが、まだ経験が浅く、日々勉強の毎日です。


~8年間でさまざまな部署を経験されているのですね
坪井 はい、2〜3年ごとに異動しており、業務を覚えた頃に次の新しい仕事にチャレンジします。上司も変わりますし、周囲の方々も変わります。さまざまな人と出会えることも、良いところと感じています。


~土木を選んだきっかけは
坪井 中学校では部活動に打ち込む毎日で、志望校を悩み、なんとなく土木科を選びました。そんな流れで、気づけば今の職場に辿り着きました。


奥野 大学卒業までに測量士の資格を取得したいと思い、その学科を選びました。
 学科では1年間、測量学を学び、夏休みに国土交通省等で約2週間の実習を行いました。私は近畿農政局に配属され、琵琶湖周辺で測量実習をしました。2週間びっしりと現場で測量を経験し、この実習を終えることで測量士補の資格が取得できる仕組みでした。


坪井 私も高校時代に実習がありました。函館の五稜郭公園で、皆で機材を担いで測量実習に出かけたことをよく覚えています。現場での作業は新鮮で、楽しい思い出でした。


~坪井さんの就職活動は
坪井 先生から「開発局という選択肢もあるよ」と教えていただき、受けてみようかなという気持ちで挑戦しました。公務員という職業は、学校ではあまり詳しく紹介される機会がなかったため、当時は情報も少なく、漠然とした印象でした。
 しっかりと準備しないと合格が難しい厳しい試験だという認識でした。受験のときはとても緊張していて、「絶対に落ちたくない」というプレッシャーがありました。もし落ちてしまったら、いわゆる“浪人”のような形になってしまうかもしれない…そんな不安もありましたが、無事に合格できて本当にホッとしました。


~ 坪井さんの今までのお仕事の内容は
坪井 函館港湾事務所では、2年間港湾工事を担当しました。
 その後、苫小牧に異動し、調査・設計等の業務に3年間従事しました。その後、本局開発調整課に配属となり、開発局の技術部門を横断的につなぐ窓口業務を担当しました。各部署から相談を受けて調整・連携を図る役割を担いました。
 特に開発調整課に配属された当初は、これまで担当してきた港湾や土木の業務とは大きく異なり、未知の分野に取り組むような感覚で、戸惑いもありました。例えば「2024年問題」として代表的なトラック輸送の課題など、物流分野の改善に関する業務もこの課で扱っております。


~海に関わる仕事に、興味を持っていたのですか
坪井 高校生の頃は、現場実習で訪れる場所の多くがトンネル工事現場で、港湾の仕事についてはあまり理解していませんでした。地元が函館ということもあり、港には関心がありましたが、当時は具体的なイメージを持てていなかったように思います。
 そのような時に、開発局の業務説明会に参加し、港湾分野に興味を持つようになりました。もともと海のある地域で育ったこともあり、港湾の仕事に魅力を感じ、志望するきっかけとなりました。


~ 奥野さんの今までのお仕事の内容は
奥野 最初はアルバイトとして、日本データーサービス(株)の環境技術部に配属され、約1年勤務した後に営業部に配属されました。
 特に寒地港湾空港技術研究センターに在籍していた頃は出張の機会が多く、各地の港を訪れることができました。さまざまな現場を見て学ぶことができ、大変有意義で楽しい経験でした。
 そのため、現在も外に出て現場に関わりたいという思いはあるのですが、出張を伴う仕事と育児との両立が自分には難しいと感じています。
 今までは育児のため時短勤務でしたが、今年4月からはフルタイム勤務となり、慌ただしい毎日を過ごしています。子どもは8歳と3歳。育児と仕事の両立に奮闘する日々ですが、周囲の支えもあり、なんとか頑張っています。


~ご主人と交代でお子さんの送り迎えをされているのですか
奥野 昨年度までは私が2時間早く退勤していたため、子どもの送り迎えはすべて私が担当していました。
 しかし、今年4月からは私一人では対応が難しくなり、夫と分担するようになりました。現在は、私が小学校へ、夫が保育園へと、1人ずつ迎えに行く形をとっています。今は交代で子どもを連れて帰るスタイルに変わり、家庭内でも協力しながら日々の生活を支え合っています。


~印象に残っている仕事は
奥野 現在、積算業務を担当しています。
 一見「当然のこと」と思われるかもしれませんが、低入札とならず無事に受注できたときには、心から嬉しく、大きな達成感を覚えます。
 もちろん、受注には技術提案の内容が高く評価されていることが前提ですが、もし積算でミスをして低入札となれば、すべてが水の泡となってしまいます。だからこそ、積算には細心の注意を払い、常に慎重に取り組むよう心がけています。


坪井 函館や苫小牧の事務所に勤務していた頃は、工事や業務の設計書作成などを担当していました。
 特に函館にいた時期には、消費税率が5%から8%へと変更されるタイミングと重なり、積算業務においてその影響を実感しました。当初5%で積算し「予算は問題ない」と思っていたのですが、開札が近づくにつれ周囲から「税率が変わりますが、大丈夫?」と確認されました。そこで改めて8%で計算し直したところ、予算をオーバーしてしまい、非常に焦った記憶があります。幸い開札前だったため調整は可能でしたが、「もしこのまま進んでいたら…」と冷や汗をかいた出来事でした。


~これまでのお仕事の中で、特に嬉しかった瞬間は
坪井 ちょうど昨日、函館へ出張し、私が以前担当していた工事現場を訪れました。
 当時は「前出し改良」の工事を担当していましたが、延長の一部しか進んでいない段階で異動となったため、完成した姿を見ることができませんでした。
 今回現場を訪れると、施設に船も着岸しており、「ついに完成したんだ」と実感しました。嬉しさが込み上げ、思わずたくさん写真を撮ってしまいました。


座談会の様子


~これまでに転職や退職を意識されたことは
坪井 転職を考えたことがまったくないわけではありません。
 これまで函館や苫小牧など、港湾関連の業務に携わってきましたが、港湾の場合は利用者と直接話す機会がほとんどありません。漁港であれば、漁業関係者など利用者と接する場面もあると思いますが、港湾はそういった交流が少なく、やりがいを感じにくいと思ったこともありました。それでも、気づけば今もこの仕事を続けています。「何が楽しいのか」と聞かれると正直うまく答えられませんし、「なぜ続けているのか」と問われても、うーん…と考え込んでしまいます。それでも、続いている、それが今の自分の実感です。


奥野 どうにか仕事を続けてこられています。
 特に子どもが生まれてからは、会社の理解がとてもあることに心から感謝しています。その分、少しずつ恩返しをしていかなければと感じています。
 本来、時短勤務は子どもが3歳の誕生日までと社内で決められているのですが、下の子が生まれたこともあり、特別に2〜3年延長していただきました。結果的に、約7年間時短勤務を続けさせてもらいました。


~男性の育児休業について
奥野 この5年ほどで、育児に対する職場の意識は大きく変わったと感じています。1人目の子どもが生まれた頃と、2人目のときでは、環境も周囲の反応もまったく違いました。男性が育児休業を取得することが当たり前になりつつあり、出産後1か月ほど取得するケースも珍しくありません。
 そうした変化は、育児に対する理解が進んできた証だと思いますし、会社側の認定取得にも繋がり、結果的に育児に関わる時間が増えるので良いことだと感じています。


~職場の中で、女性同士の交流の場などはありますか
坪井 開発局内では、技術職の女性職員が集まる交流の場があります。年に1〜2回程度の開催ですが、現場見学や意見交換会などを通じて、業務に関する情報共有や交流を図っています。
 開催内容は開発建設部によって異なりますが、主に現場見学と意見交換が中心です。時間は半日程度と限られていますが、同じ技術職としての悩みや経験を共有できる貴重な機会となっています。


~これからの仕事や今後の目標について
坪井 今のところ明確な目標はなく、何となく日々を過ごしているような感覚ですが、これまで経験したことのない業務に挑戦してみたいという気持ちがあります。
 現在は、工事や積算、設計調査などの業務に携わっていますが、予算関連の業務にはあまり関わったことがありません。今後は少しずつ取り組んでみたいと思っています。
 自然体で、自分らしく仕事を続けていけたらいいなと感じています。


奥野 日々の業務に追われることが多く、目標や「やってみたい仕事」について、じっくり考える余裕がなかなか持てないのが正直なところです。
 技術提案書の作成は、皆が一生懸命取り組んでいます。寝る間も惜しんでいる様子を見ているので、絶対に自分が足を引っ張るわけにはいきません。価格が少し高くて案件を取れないのであればまだ納得できますが、低入札でミスしてしまうと、これまでの提案書作成の努力がすべて無駄になってしまいます。
 そのようなことが起きないよう、二度と繰り返さないという強い気持ちで取り組んでいます。そのために、しっかりと知識を身につけ、必要な勉強を重ねていきたいと考えています。


~仕事以外の新しいチェレンジ
坪井 一度、釣りをしてみたいと思ったことがあるのですが、どうしても餌に触るのが苦手で…。軍手では対応できないと思い、しっかりと水を通さないゴム手袋などで完全防備しないと無理だなと感じました。
 餌のぷにぷにした感触を想像するだけで、少し抵抗がありますが、釣りにはちょっと興味があります。


奥野 実際にやってみると、釣りはなかなか大変でした。
餌を針に刺す作業がどうしても苦手で、気持ち悪さに思わず逃げ出したくなるほど。
 一人で「無理!」と叫びながらも、同行者に「やってみて」と言われて、渋々「はい…」と返事をして挑戦しました。結局その日は魚が釣れず、苦労だけが残った釣行となりましたが、今ではちょっとした笑い話です。


~入札業務が一段落したら
奥野 開発局の入札は、毎年7月〜8月頃に一段落します。その後は、市町村などの案件が少しずつ出てくるため、それらの対応に取り組みます。
 また、開発局から公表される内訳書を確認し、いわば“間違い探し”のような作業も行います。「この項目が3円違うのはなぜだろう?」といった細かな点を検証しながら、翌年度の入札に向けた準備を進めています。
 そして、次の入札時期が近づいてくると、「もう次の年が始まるのか」と毎年のサイクルを実感しながら、また新たな業務に向き合っています。
 工期末には設計変更が発生することもあり、業務が立て込む時期です。
 さらに、今年から旅費制度が変更されたこともあり、「どう対応すべきか」と社内でも話題になっています。制度の変更に伴う実務への影響が大きく、現場では戸惑いの声も上がっており、今後の対応方法について検討を重ねているところです。


~ リクルート活動について
坪井 苫小牧港湾事務所に配属されていた時に苫小牧高専を訪問する機会がありました。また、インターンシップ生が来所した際には、他事務所のインターンシップ生との意見交換会を実施することもありました。
 開発調整課に所属していた時は、採用活動も担当し学生向けの業務説明会を行いました。道内各地はもちろん、本州の大学でも説明会を開催しています。
 最近では、X(旧Twitter)などのSNSを活用して、業務説明会の開催情報などを積極的に発信しているようです。若い世代はホームページよりもInstagramやTikTokなどのSNSを通じて情報を得る傾向が強く、そうした流れを受けて、Instagramの運用も一昨年頃から始めました。その効果もあり、関心を持ってくれる方が増えてきたように感じています。


~ 長時間にわたり、さまざまなお話をお聞かせいただき、誠にありがとうございました。
皆さまのおかげで、非常に有意義な座談会となりましたこと、心より感謝申し上げます。


前列左から奥野さん、坪井さん
後列左から大畠さん、神山さん



― インタビュアーからひとこと


大畠委員:
 おかげさまで、リレートークも第3回を迎えることができました。
 今回は、お母さんとして子育てをしながら働く奥野さんと、高校卒業後すぐにこの世界に飛び込んだ坪井さんをゲストにお迎えしました。
 お二人のお話を伺い、私が入社した頃と比べて、女性がより働きやすい職場環境になってきていることを実感し、嬉しく思いました。
 誰もがいきいきと働ける職場づくりが、この業界の未来につながっていく――そう感じた時間でした。
 本日はありがとうございました。


神山委員:
 第3回リレートークは、仕事も家庭もフル活動の奥野さんと、ひょんな御縁で、港湾土木の仕事に携わっている坪井さんのお二人にお話を伺いました。
 過去(第1回・第2回)とは、違ったお話を聞けて、しかしながら、とても前向きに取組む姿勢は、皆様共通で、「志は一緒だな」と実感しました。
 女性技術者故の強みや価値を活かし、誰もが働きやすい環境を整備する動きを発信していきましょう!
 本日はどうもありがとうございました。


― 編集後記
 約2時間にわたる座談会でしたが、出席者とインタビュアーの間で会話が途切れることなく、多彩な話題で盛り上がりました。
 紙幅の都合によりすべてをご紹介することはできませんが、若手職員の仕事への向き合い方や、企業・官庁における取り組みなど、非常に参考になる内容が多く含まれていました。
 ご出席いただいた奥野さん、坪井さん、そして広報委員のお二人に心より感謝申し上げます。
 次回の「北のみなとリレートーク」も、どうぞご期待ください。