木 島 榮 子 氏

きじま・えいこ:慶応大卒。海外専門の旅行会社で商品企画を担当、添乗員としても世界各国を回る。クルーズ客船ツアーの販売会社に転じ、12年から現職。
世界のクルーズ人口は2100万人もいますが、欧米で大型客船の新造が続き、供給過多に陥っています。新たな市場を開拓しようと、プリンセス・クルーズ社は2013年から日本発着クルーズを始めました。
クルーズ客船に乗る日本人の平均年齢は、およそ65歳。生活が安定している人が多い年代で、集客の可能性は高い。加えて、日本は観光地が多く、外国人にとっても魅力的なフライ&クルーズ(飛行機と客船を組み合わせた旅行)を提供できると判断しました。
今年は「サン・プリンセス」(乗客定員2020人)と「ダイヤモンド・プリンセス」(同2670人)の2隻を投入、道内外でツアーを行いました。小樽発着で道内とサハリンを周遊する7泊8日のクルーズも企画、6月から9月まで12週続けて運航し、函館や室蘭、釧路、網走を回りました。
小樽を発着地に選んだのは、新千歳空港からのアクセスの良さに加え、円滑な乗下船や出入国管理が可能だからです。観光地としても魅力的でした。他の寄港地を決める際にも、こうした条件を考慮しました。
寄港地では地域住民との交流はもちろん、経済波及効果の面でも貢献できたと思います。乗客や乗組員が寄港地1カ所で使う消費額は1人当たり1万~2万円。燃油や食料の調達だけでなく、飲食店や観光施設の増収に寄与しました。
一方、運航を続ける中で、課題も分かりました。港は貨物船と一緒に使うので、希望通り接岸できないことも。乗客を中心市街地に運ぶ観光バスの確保が難しいケースも出ました。
本州からお客を呼び込むフライ&クルーズを普及させたいです。格安航空会社(LCC)を使った商品開発を考えなければいけません。海外からの直行便も、どんどん受け入れてほしい。クルーズ客船で道内観光を国際化するためには、欠かせない取り組みです。
また、今年、道民のクルーズ参加は想定の半分以下でした。クルーズ客船の旅の楽しさを知ってほしい。集客に苦戦したこともあり、来年はサン・プリンセスは道内に来ませんが、ダイヤモンド・プリンセスは来ます。市民見学会などを通じ、クルーズ客船を身近に感じてもらいたいです。
今後、日本のクルーズ市場は、中国をはじめとしたアジア市場の影響を大きく受けるでしょう。今は中国発着だと沖縄や九州までしか来ていませんが、クルーズ人口は増えており、2~3年後には道内にも今以上のクルーズ客船が訪れるようになるとみています。
私たちも大型客船だけでなく、小型、中型客船で道内の離島などに向かうツアーを組めないか検討中です。各港で受け入れ態勢を整えていただきたい。北海道の魅力が国内外で広く知られるよう、私たちも努力します。来年は残念ながら1隻態勢に戻しますが、17年以降に期待してください。